ステーブルコイン発行企業のサークルは19日、暗号資産(仮想通貨)取引所のコインベースおよびリップル(XRP)と買収に関する協議を進めていたことが明らかになった。
サークルは、ステーブルコインであるUSDコイン(USDC)の発行元として知られ、4月に新規株式公開(IPO)を申請し、50億ドル(約7250億円)の企業価値を目指している。
一方で、同時並行的にコインベースおよびリップルと初期段階の売却交渉も行っていたことが複数の報道で判明した。
コインベースとサークルの深い関係性
サークルとコインベースは2018年にUSDCの発行を目的としたセンター・コンソーシアムを共同設立したが、2023年に解散した。
その後もコインベースはUSDC準備金の収益を50%ずつ分配し、同プラットフォーム上におけるUSDC保有分については全収益を得るなど、サークルと強固なビジネス関係が続いている。
加えて、コインベースはサークルの株式を保有し、USDCに関する新規提携や知的財産の管理にも一定の権利を持っている。
このため、アナリストの間では、コインベースがUSDC事業と最も深く関わる「論理的な買収元」とみられている。
また、コインベースは2025年3月時点で約80億ドル(約1兆1600億円)の現金資産を保有しており、追加の資金調達も可能とされる。
リップルの買収提案と今後の見通し
一方、リップルはサークルに対し、4億〜5億ドル(約580億〜725億円)規模の買収案を提示。支払い方法は現金とXRPを組み合わせる形だったが、サークル側は評価額が不十分としてこの申し出を拒否した。
リップルは総額1170億ドル(約16兆9650億円)相当のXRPを保有しており、今後も資金力を活かした提案が予想される。
サークル側は引き続きIPOを重視する姿勢を示す一方、買収協議も「万一の選択肢」として検討中とされる。
業界関係者からは、コインベースによる買収が実現した場合、USDCのエコシステムにとって大きな転換点となる可能性があるとみられている。
今後の動向と規制の課題
コインベースのブライアン・アームストロングCEOは、M&A(企業買収)には前向きだが、現時点でサークル買収の計画はないと明言している。
一方、リップルが再度XRPを含む提案を行った場合、規制当局による承認や資産の活用方法について複雑な調整が必要となる見通しだ。
サークルのIPOが遅延する中、今後の交渉の行方やステーブルコイン事業の主導権争いが、仮想通貨業界の注目を集めている。