著名なイーサリアム研究者のジャスティン・ドレイク氏は17日、ビットコイン(BTC)への51%攻撃がイーサリアム(ETH)に比べてはるかに低コストで可能だとする見解を示した。
ビットコインとイーサリアムは、それぞれ異なる合意形成メカニズムを採用している。
ビットコインは「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」、イーサリアムは「プルーフ・オブ・ステーク(PoS)」を導入しており、それぞれの仕組みでネットワークの安全性を維持している。
ビットコインのセキュリティ予算と攻撃リスク
ドレイク氏によれば、ビットコイン(BTC)のネットワークを51%攻撃するには、ハッシュレート(処理能力)の過半数を一時的に支配することが必要だ。
現在の設備コストやリース可能なマイニング機器の存在を考慮すると、推定コストは約100億ドル(約1兆4800億円)とされている。
これは一見巨額だが、国家や大規模な組織にとっては達成不可能な金額ではない。
一方、イーサリアム(ETH)のPoSは、ネットワーク安全性を維持するために相当額のETHを購入し、長期間ロックする必要がある。
2025年5月時点で、イーサリアムにステーキングされているETHは3420万ETH、評価額は約896億ドル(約13兆2600億円)に上る。
ネットワークの過半数を獲得するには、約448億ドル(約6兆6300億円)分のETHが必要になる計算だ。
この違いにより、イーサリアムのほうが攻撃抑止力が高いとされる。
ドレイク氏やイーサリアム関連企業イーサリアライズのグラント・ハマー共同創業者は、ビットコインのセキュリティモデルでは、ネットワーク価値が小さいほど攻撃コストも下がると指摘している。
PoSとPoWのセキュリティモデルの比較
イーサリアムのPoSモデルでは、膨大な資本を投じてETHを取得し、長期間ネットワークに資産をステークする必要がある。
ステーキングされたETHの価値が高いほど、攻撃に必要な資本も増加するため、攻撃のハードルが上がる仕組みだ。
一方、ビットコインのPoWでは、必要となるのは主にマイニング機器の一時的な取得やリースコストに限定される。
マイニング機器は中古市場で売却もできるため、攻撃コストは実質的な損失としてはより低くなる可能性がある。
こうした点から、ドレイク氏はイーサリアムのPoS移行を「戦略的な防衛策」と評価している。ただし、ETHの集中化や価格変動など新たなリスクも指摘されており、万能とは言い切れない。
今後の仮想通貨ネットワークの安全性を考える
今回の指摘は、暗号資産(仮想通貨)のネットワーク設計において、セキュリティ予算の重要性とその持続可能性を改めて浮き彫りにした。
仮想通貨データ分析企業のコイン・メトリクスなど一部調査機関は、現状のビットコインとイーサリアムはいずれも攻撃困難だと分析している。
ドレイク氏やハマー氏は「今後強力な攻撃者に対し、ビットコインは十分な抑止力を維持できない恐れがある」と述べている。
今後、仮想通貨ネットワークの安全性は、手法や報酬設計によってさらに議論される必要があるだろう。