イーサリアム、7日にPectraアップグレード実施|効率性向上へ

私たちを信頼する理由
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イーサリアムのPectraアップグレードによるネットワーク進化を象徴する抽象的なノード接続図

イーサリアム(ETH)は7日、待望のペクトラ(Pectra)アップグレードを実施する予定だ

このアップグレードは、ステーキング、ブロブ(BLOB)、アカウント抽象化といった技術に関する改良をもたらす。

Pectraアップグレードは、スケーラビリティ(拡張性)、使いやすさ(ユーザー体験)、検証者(バリデータ)作業効率の向上を目的として設計されている。

アップデートはイーサリアムの「取引などを実行する部分(Pragueという開発コード名)」と「取引の正しさを皆で確認・合意する部分(Electraという開発コード名)」の両方に対する改良を同時に行うものだ。

そのために、10件以上の具体的な改善提案(EIP)が導入され、イーサリアム(ETH)の中核となる機能がよりスムーズに動くようになる。

主な変更点|BLOB、ステーキング、アカウント抽象化

主な変更点の一つは、ブロックあたりのBLOBデータ容量の倍増だ。

容量は3から6に増加し、最大で9まで対応可能になる。これにより、レイヤー2(イーサリアムの処理を向上させる技術)はより多くのトランザクション(取引)を低コストで投稿できるようになる見込みだ。

ステーキングに関しても改善が行われる。新しい改善案(EIP-7251)では、バリデータの最大ステーク額が32 ETHから2048ETHに引き上げられる。

これにより、大口のステーキング事業者が、効率的に管理・運用することが可能になる。

さらに、バリデータの準備時間(アクティベーション)は従来の約12時間から13分へと大幅に短縮される。出金は標準的なトランザクションを通じて処理されるようになる。

改善案(EIP-7702)によるアカウント抽象化も導入される。

イーサリアムの外部所有アカウント(EOA)は、自身をスマートコントラクト(契約自動化)へわざわざ作り変える必要なく、一時的にスマートコントラクトとしての機能を利用できるようになる。

この結果、ガスレストランザクション(手数料のいらない取引)や署名バンドル(複数の操作を一つにまとめて署名・実行すること)、スポンサー付きガス料金(第三者が手数料を肩代わりする仕組み)といった、より高度で便利な操作が可能になる。

アップグレードがもたらす影響と考慮事項

BLOB容量の増加は、レイヤー2のトランザクションコストを削減する。これは、分散型金融(DeFi)や分散型アプリケーション(dApp)の採用を加速させる可能性がある。

一方で、改善案(EIP-7251)は機関投資家にとってステーキングを簡素化するものの、バリデータの力が大規模な事業体に集中するリスクも指摘されている。

イーサリアムにデータを記録する従来の方法(calldata)に対するガス料金が高くなることで、プロジェクトはBLOBの使用へと移行するインセンティブが働く。

これはイーサリアムの長期的な処理能力向上(スケーリングロードマップ)に沿った動きと言える。

市場心理(センチメント)に関して、このアップグレードがネットワークの有用性を向上させると認識されれば、イーサリアム価格の変動要因となる可能性がある。

ただし、価格との直接的な関連性は推測の域を出ない。このような技術的進歩は、仮想通貨投資を検討する上で重要な判断材料の一つとなるであろう。

セキュリティや機能面でも改善が行われる。

暗号計算(BLS12-381)を効率化する部品(プリコンパイル(EIP-2537))が追加され、ゼロ知識証明(内容を明かさずに正しさを証明する技術)を活用したプライバシー重視のアプリ開発などが強化される。

また、バリデータがネットワーク参加を安全に終了する際の手続き(EIP-7002)も改善され、特定の遅延リスクが低減される。

ネットワーク変更(ハードフォーク)は5月7日に確定しており、ユーザー側での対応は不要だ。

なお、「Verkleツリー」や「データ可用性サンプリング」といった、さらに高度なスケーリング技術の導入は次回のアップデート以降に持ち越された。

しかし、今回の変更は、将来のイーサリアムの性能向上に向けた重要な土台作りと位置づけられている。

著者: 早下 光

暗号資産ライター。2019年からの仮想通貨市場経験を基に、ブロックチェーン技術の基礎から応用、最新ニュースまで、正確・深い情報で読者の理解をサポートします。