米国のイラン核施設への攻撃が報じられた22日、暗号資産(仮想通貨)市場でビットコイン(BTC)の価格が一時下落した。
この動きと連動するように、ビットコインネットワークの健全性を示すハッシュレートにも低下が見られ、市場に緊張が走っている。
今回の価格変動は、中東における地政学リスクの高まりが直接的な引き金になったとみられる。仮想通貨市場が、従来の金融市場と同様に国際情勢の影響を強く受けることを改めて示す出来事となった。
ハッシュレート低下の背景にイランの影
市場関係者が特に注目しているのは、ハッシュレートの低下である。ハッシュレートは、ビットコインのマイニング(採掘)に必要な計算能力の総量を示す指標であり、その低下はマイニング活動の停滞を意味する。
専門家の一部は、この低下の原因がイラン国内のマイニング活動の停止にあると分析している。報道によると、攻撃後、イラン国内では大規模な停電やインターネットの遮断が発生した可能性があり、これがマイニング施設の稼働に影響を与えたとの見方だ。
イランは、米国による厳しい経済制裁を回避し、外貨を獲得する手段としてビットコインのマイニングを国策的に推進してきた背景がある。安価な電力を利用できる同国は、世界のハッシュレートにおいて一定のシェアを占めているとされてきた。
地政学リスクが仮想通貨市場に与える影響
今回の出来事は、特定の国や地域にマイニング能力が集中することの脆弱性を浮き彫りにした。一国の政治・軍事的な出来事が、分散型であるはずのビットコインネットワーク全体に影響を及ぼす可能性を示している。
ビットコインは市場の基軸通貨であり、その価格やネットワークの安定性に関する懸念は、他のアルトコイン市場にも波及する。
実際、BTCの価格下落後、多くのアルトコインも連動して値を下げる展開となった。これは、地政学リスクが仮想通貨市場全体に与える影響の大きさを示している。
今後の焦点は、米イラン間の紛争がさらに拡大するかどうかだ。
もし状況が悪化すれば、イランにおけるマイニング活動のさらなる停滞や、中東地域全体への不安定化を通じて、世界のハッシュレートに再び大きな影響を与える可能性がある。市場参加者は、紛争の行方を固唾をのんで見守っている。