米ワシントン州スポケーン市議会はこのほど、市内における暗号資産(仮想通貨)ATMの設置を禁止する条例を全会一致で可決した。
この決定は、同市で仮想通貨ATMを悪用した詐欺被害が深刻化していることを受けたものである。
詐欺被害の急増が背景に
今回の禁止条例の背景には、仮想通貨ATMが詐欺行為の温床となっている現状がある。特に高齢者や金融知識に不慣れな人々が標的にされるケースが目立つ。
詐欺師は、恋愛感情を装う「ロマンス詐欺」や、孫をかたって金銭を要求する「祖父母詐欺」などの手口で被害者をだます。
そして、指定した仮想通貨ウォレットに送金させるため、被害者を仮想通貨ATMへ誘導する。詐欺師は、送金先として主にビットコインなどの追跡が困難な通貨を指定することが多い。
被害者は指示されるがままにATMで現金を入金し、表示されたQRコードをスキャンして送金操作を完了させてしまう。一度送金された仮想通貨を取り戻すことは極めて困難であり、多くの市民が深刻な金銭的被害に遭っていた。
従来の金融システムに比べて規制が緩やかであるため、仮想通貨ATMは詐欺師にとって追跡を逃れやすい送金手段として悪用されやすい状況にあった。
市民保護を目的とした全会一致の決定
スポケーン市議会は、こうした状況を重く受け止めた。議員らは、市民、特に社会的に脆弱な立場にある人々を詐欺から守ることが行政の責務であると強調した。
議論の結果、市内での仮想通貨ATMの設置と運営を禁止することが、詐欺師の活動を物理的に困難にし、将来の被害を未然に防ぐための最も効果的な対策であると結論付けられた。
この条例が全会一致で可決されたことは、問題の深刻さに対する市議会の強い危機感と、市民保護への断固たる決意を示すものだ。
今回の措置は、他の自治体が同様の詐欺問題へ対処する上での先例となる可能性がある。
市民一人ひとりが自衛のため、信頼できる仮想通貨ウォレット情報を参考にし、金融知識を高めることも重要である。