米証券取引委員会(SEC)のポール・アトキンス委員長は31日、暗号資産(仮想通貨)に対する「執行による規制」を終了し、新たな規制アプローチへ移行すると発表した。
この方針転換は、デジタル資産に関する証券法を近代化するための新たな取り組み「プロジェクト・クリプト」を通じて行われる。
これまでSECは、仮想通貨を無視するか、個別案件への法執行措置を追求するかのいずれかだと批判されてきた。今回の発表は、こうした従来のアプローチから大きく舵を切るものだ。
アトキンス委員長は、「ほとんどの仮想通貨は証券ではない」と述べ、これまでのSECの見解に異議を唱えた。この発言は、米国を世界の仮想通貨リーダーにするというトランプ政権の取り組みと一致している。
プロジェクト・クリプトの3つの柱
プロジェクト・クリプトには3つの主要な目標がある。第一に、分散型ネットワークやスマートコントラクトといった仮想通貨特有の性質に合わせた規制の枠組みを更新することである。これにより、従来の証券規制をオンチェーンのデジタル資産市場に対応させる。
第二に、トークンの発行、保管、取引に関する明確な「交通ルール」を確立することだ。これにより、市場参加者に法的な確実性を提供することを目指す。
第三の目標は、長期にわたるルール策定プロセス中に、仮想通貨プロジェクトに対して一時的な免除措置を認めることである。これは、技術革新を阻害しないための配慮といえる。
規制転換の背景と今後の展望
この規制方針の転換には、いくつかの要因が影響している。トランプ政権が2024年の選挙公約で掲げた「米国を地球の仮想通貨首都にする」という目標が、規制見直しの大きな推進力となった。
また、機関投資家の参入拡大や、SECの過度に積極的と見なされた法執行に対する懸念から、業界内で明確なルールを求める声が高まっていた。さらに、分散型金融(DeFi)やブロックチェーン技術を主流の金融インフラに統合する必要性も、この動きを後押ししている。
SECは今後、大統領作業部会からの提言を迅速に検討し、規則案についてパブリックコメントを求める予定だ。トークンの配布方法、カストディサービス、取引所の運営に関する規則の策定が急がれる。
長期的には、仮想通貨が持つ透明性や効率性を活用し、米国の市場がオンチェーンでの取引・決済システムを導入できるような環境を整えることを目指している。
この動きは、市場の主要なプレーヤーであるビットコインやイーサリアムだけでなく、他のアルトコインにも影響を与える可能性がある。規制の明確化は、より多くの投資家にとって仮想通貨投資のリスクを低減させることにつながるだろう。