暗号資産(仮想通貨)取引所大手クラーケンは20日、キプロスを拠点とする子会社を通じて、欧州最大規模の規制準拠型仮想通貨デリバティブ(先物)取引サービスを開始した。
クラーケンの新サービスは、欧州経済領域(EEA)全域の個人投資家および機関投資家向けに、永続型および満期型の先物契約を提供する。
これらの商品は、MiFID II(金融商品市場指令)に準拠し、同社が2025年初頭に取得したライセンスを持つ子会社Payward Europe Digital Solutions (CY) Ltdを通じて運営される。
欧州市場向けに強化された取引基盤
新たに提供される仮想通貨デリバティブ取引は、1日当たり10億~20億ドル(約1450億~2900億円)の高い取引量を誇るとされる。
プラットフォームは、現地通貨での入出金や柔軟な担保設定、リスク管理ツールなど、機関投資家向けに設計されたインフラを備えている。
また、MiFID IIに準拠することで、欧州連合の厳しい金融規制を順守。これにより、信頼性と透明性が求められる欧州市場で競争力を強化している。
クラーケンはこれまでも、2019年のCrypto Facilities(英国先物取引所)の買収や2024年のNinjaTrader(米国デリバティブ事業)の買収など、戦略的にデリバティブ分野を拡大してきた経緯がある。
欧州での仮想通貨普及を見据えた展開
今回のサービス開始は、欧州で高まる仮想通貨デリバティブ取引への需要を背景にしたものだ。
欧州では、個人の仮想通貨投資家のみならず、機関投資家や高額資産者を中心に、安全性とコンプライアンスを重視した取引プラットフォームの需要が拡大している。
競合他社としては、コインベース(Deribit買収)、ビットスタンプ、ジェミナイなどもデリバティブ分野での展開を強化しており、クラーケンも市場シェアの獲得を目指している。
クラーケンのエクスチェンジ部門責任者、シャノン・クルタス氏は「欧州はビットコインをはじめとする仮想通貨普及において非常に重要な地域だ」と述べ、規制順守と信頼性を武器に欧州市場での存在感を高める方針を示した。
今回の展開は、グローバルでコンプライアンスを重視した仮想通貨取引所を目指すクラーケンの長期戦略の一環といえる。
今後も規制対応力と先進的な取引インフラを活かし、欧州を含む成長市場での拡大が期待される。