オンライン決済大手のPayPalは28日、米国の加盟店で100種類以上の暗号資産(仮想通貨)による支払いを可能にする新サービス「Pay with Crypto」を開始した。
このサービスは、3兆ドル(約444兆円)を超える仮想通貨市場への参入を目的としており、取引コストを従来比で90%削減することを目指している。
利用者はCoinbaseやMetaMaskといった主要なウォレットを連携させ、支払いが可能になる。
100種類以上の仮想通貨に対応、手数料は0.99%に
今回のサービス拡大により、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)をはじめ、テザー(USDT)、XRP、BNB、ソラナなど100種類を超える主要な仮想通貨での支払いが可能になる。
PayPalは2020年から仮想通貨の売買・保有サービスを提供しており、今回の機能拡充はその流れを汲むものだ。
特筆すべきは、取引手数料が0.99%と低く設定されている点である。これまで仮想通貨決済の普及を妨げてきた高い手数料や価格変動、決済の遅延といった課題に対応する。これにより、利用者と加盟店の双方にとって利便性の高い決済手段となることが期待される。
この動きは、同社が最近発表した5つの主要なグローバルデジタルウォレットを統合する「PayPal World」構想の一環でもある。国境を越えた商取引の障壁を低減するという同社の目標とも合致している。
加盟店のメリットと今後の展望
加盟店にとって最大の利点は、仮想通貨による支払いを受け付けても、即座に法定通貨で決済される点だ。
これにより、仮想通貨特有の価格変動リスクを完全に回避できる。利用者はPayPalアプリを通じて簡単に支払いでき、仮想通貨から法定通貨への変換はプラットフォームが自動で行う。
さらにPayPalは、加盟店が米ドルに連動する独自のステーブルコイン、PayPal USD(PYUSD)を保有した場合、4%の報酬を付与するインセンティブ制度を導入した。これはPYUSDの採用を促し、エコシステム内での利用を活性化させる狙いがある。
このサービスはまず米国の加盟店を対象に開始し、将来的にはグローバルに展開する計画だ。
PayPalは規制当局との連携や強固なコンプライアンス体制を背景に、安全で信頼性の高い仮想通貨決済の普及を目指していく。